| 1私が「ダンボールコンポスト」という言葉を使っていない理由 2発酵と分解 3糸状菌と放線菌 4加水する水の温度について 5意外と分解しにくい |
1私が「ダンボールコンポスト」という言葉を使っていない理由
このウエッブサイトの中で、引用は別にして、私自身は私の言葉として「ダンボールコンポスト」という言葉を使っていません。その理由は以下の通りです。
知人との会話の中で「ダンボールコンポストをやっている」というと、相手からはしばしば「なんじゃそれは」と返ってきます。そのたびに私は「ダンボール箱を使って生ごみをたい肥化する」と説明することになります。「ダンボールコンポスト」という言葉は、知っている人はもちろん知っているし、ネットで検索すれば沢山情報を引き出すことは可能です。しかし、例えば広辞苑にはまだ掲載語として採用されていないように完全には市民権を得ていないように感じます(広辞苑を基準にするのもおかしいですが)。
そもそも、「ダンボール」はカタカナで書かれていますが、れっきとした日本語です(英語ではcardbord)。そこに堆肥を意味する英単語「コンポスト(compost)」がくっついているわけですから、英語を母語とする人でも理解はできないでしょうし、私の知人のように聞いたこともないという人もいるわけです。
しかし、日本語としての「ダンボールコンポスト」という言葉を編み出した人は言語能力にたけた人だとも思います。私はこの言葉の内容のキーワードは「ダンボール箱」「生ごみ」「堆肥(化)」だと理解するので先に述べたような長い言葉で言い換えているわけです。先祖返りのようですが。で、これを英語で言い換えると「Composting in cardbord box with organic waste」ぐらいになって英語を母語とする人も理解できるのではないかと考えています。
2発酵と分解
ダンボール箱を利用した生ごみ堆肥化についての本やウェッブサイトで時々「発酵」という語を目にすることがあります。
食品製造分野での「発酵」は微生物の活動が食品や飲料に望ましい変化をもたらすあらゆる過程(要するに嫌気性であろうが好気性であろうが関係なく)をさすものとされるのに対して、生化学の分野での「発酵」は酸素のない状態で炭水化物からエネルギーを取り出すことと定義されているようです。
生ごみの堆肥化は食品製造分野ではないので、生化学分野の事と考えると、嫌気的条件ではなく、好気性条件で行われますので、この分野での発酵には該当しないことになります。堆肥化過程において、微生物(菌)は生ごみの炭水化物(多糖類)に対して酵素を分泌し、それを分解して単糖類に変換したのち、体内に吸収しエネルギーに変えたり、自己の増殖に利用したりします。要するに、微生物の生ごみに対する働きかけは「分解」で、それを空気のある条件で行っているわけです。従って、私は、このウエッブサイトの中では「発酵」を使わず、「分解」をもっぱら使うことにしています。
参考文献 染谷孝『人に話したくなる土壌微生物の世界』築地書館2020
3糸状菌と放線菌
生ごみの堆肥化で活躍する菌類は糸状菌(しじょうきん)と放線菌とされています。ただし、「糸状菌」も「放線菌」も菌類の分類学上の名称ではなく、「糸状菌」は菌糸と呼ばれる管状の細胞から構成される菌類の総称であり、「放線菌」は元々は菌糸が放射状に伸びるためにつけられた名前だとされています。
生ごみ堆肥化の最初の頃に糸状菌が発生してきます(写真)。母材の表面に白いふわふわとしたような感じの塊が発生してきます。これが発生してくれば初期段階としては成功です。これは取り除くのではなく、生ごみを投入するときに一緒に母材の中に練り込んでしまいます。これによって糖類、タンパク質、脂肪類など易分解性の有機物が分解されます。微生物はこの分解で増殖し、活発に活動することで発熱して、母材の温度が上昇します。このような糸状菌は堆肥化の初期に短期間、せいぜい一週間程度、見られ、その後はなぜか見られなくなります。

この写真は母材表面に盛大に発生した糸状菌で、この時最高温度は、ほぼ50℃でした。
母材の温度が60℃くらいになってくると、放線菌が増え始めます。放線菌は最初は、母材表面に白い小さなツブツブが出てくるので確認できます。糸状菌のような派手な発生ではないので気を付けてみる必要があります。
糸状菌は比較的低温で、放線菌は高温範囲で活動が活発になります。私の経験では、生ごみの投入を終了して、熟成を始める前に、米ぬか単独でどれだけ温度が上昇するかを実験したとき。すなわち、数日間米ぬかだけを投入していた時に、放線菌が大量に発生し、上部表面はもちろん、攪拌した中にも放線菌の白い粒が沢山あるのを確認しました。
4加水する水の温度について
母材の温度が50℃や60℃になると水分の蒸発量も多くなります。お風呂の温度は40℃を少し超えたくらい。それでも浴槽の蓋をとれば鏡はたちまち水滴におおわれてしまいます。50℃以上が数時間続けば蒸発量が多くなるのは当然です。高温が続いたら、母材の含水量を適正に保つためには水を加える必要があるかもしれません。
加水しようと取り置きして置いた水は当然冷たくなっています。例えば15℃くらいかもしれません。これを30℃ある母材に加えると、母材の温度は下がってしまいます。母材の温度をあげようと努力しているのに、これでは台無しです。加水する水の量が多ければ低下する温度も大きくなります。
温かいお湯を加えれば温度低下は、最小限に抑えられるかもしれません。微生物も冷水にびっくりすることなく活動してくれるでしょう。ただし80℃を越えるような熱湯では、菌はびっくりを越えて死滅してしまうかもかもしれません。40℃前後の温水が適当ではないでしょうか。
加水したら十分に攪拌する必要があります。たとえば200㏄加水して、そのままにすれば、水の入ったところは、水が溜まって空気がなくなり、好気性の菌は働らかなくなります。一方水のいきわたらなかったところは含水率が低いままで、これも菌類の活動しにくい環境のままです。加水したら母材にまんべんなく水がいきわたるように手袋をした手で攪拌することが必要です。
5意外と分解しにくい
堆肥化にふさわしくないものについては関連するウェッブサイトや本に書かれています。それによれば、貝殻、トウモロコシの芯、玉ねぎの皮、筍の皮など等。それらは常識的にも理解できるものです。ところがこれは当然分解されるだろうと思えるのに、いつまでたっても残っているものがあります。
夏の夕方に食べるとおいしいビールの友、枝豆の莢(さや)が意外と分解されません。特に莢の内側の薄皮と二枚のさやをつなぎとめている筋が分解されない。母材の温度が60℃を越えても残るようです。
植物性のもので、分解しにくいものとしてはリグニンが考えられますが、いったいどういう化学成分からできていて、どういう化学構造をしているのでしょうか。菌類で分解できない、耐久性の強い素材の開発につながるかも、なんて夢を見てみませんか。

月下美人
2024年10月
